発達障害だと思っていたら、愛着障害だった私の話

しくじり人生の中で気付いたことを共有するブログ

【しくじり人生⑪】人並みに仕事が出来るようになったけど新たな壁にぶつかる話と愛着障害という答えに巡り合った話

 

前回のお話はコチラ

mauve-jasmin.hatenablog.com

 

◆ 二年間の怒りが大爆発!けれど伝わってないと思うよ・・・

ようやく人並みに仕事が出来るようになって三年目に突入したぐみさん。

育児休職中の社員(Aさん)が復職するという話を耳にします。このタイミングで辞めようと決めていたので、次の契約を更新しないことを派遣会社に伝えました。

派遣先は彼女と入れ替わりで辞めるつもりだとは知りません。

彼女が復職する噂が社内に流れ始めた頃、(Aさんが戻ってきたらこいつ(私のこと)の仕事はなくなる。うちに残りたいだろうこいつはどうするんだろう?)と面白がるような目線で人の顔色を窺う周囲の様子が気に入りませんでした。

また、前評判からAさんを『非常に仕事が早く、正確な人』と思い込んで、私を下げた言動を取るのも気に入りませんでした。Aさんは出来る人風に見せる技術の高いタイプでした。後輩のBさんに仕事を押し付け、残った仕事は雑にこなすから早いだけだし、また、長らく同じ仕事をして精通していることから後から異動してくる総合職に無言の圧力をかけて疑問を飲み込ませ、ミスを修正させていただけで、本当の意味で仕事の出来るタイプではありませんでした。

そんなAさんは意地悪な人で嫌がらせをたくさんされました。私は彼女のことが大嫌いでした。仕事と家庭の両立をしつつ私の仕事を丸々引き継いで(Bさんの仕事も引き継いだので、Aさんの育休前より仕事量は多かった)定時に帰るのは無理だということに気付いていながら辞めました。『仕事の出来るAさん像』なんて早々にぶっ壊れればいい、ざまぁみろと思っていました。

前触れもなく辞めることで怒りを分からせたかったのです。自分たちは選ぶ立場だと思いあがった彼らに、「お前らが大嫌い、お前たちはいらない」と切り捨てることが、あの頃の私にとって唯一の復讐だったのでしょう。送別会は「皆様の貴重なお時間を、たかが派遣社員の私のために割いて頂くのは申し訳ないので」と拒否し、手紙つきのプレゼントは家に帰ってから開封することなく速やかに捨て、色紙はメッセージを読まずに元彼の会社にあるシュレッダーにかけてもらうよう頼みました。

 

当時の気持ちを振りかえると『闇が深いなぁ』の一言に尽きます。

そんなに『大切にされたい』んだったら、それなりの振る舞いというものがあります。受け答えがキチンとしていて、礼儀正しく常識のある人をバカにする人は中々いませんからね。残念ながら、あの頃の私には欠けていたものばかりです。そもそも、実務能力を身に付けることを優先して社交能力を伸ばすことを切り捨てたんだから自業自得とも言えます。選択が極端なのも愛着障害を持つ人の特徴らしいですが、客観的に見ると哀れですね。

 

そんなわけで疲れ果てた私は一ヶ月ほど休み、再び同じ派遣会社を使って別の会社に潜り込みます。「正社員になりたい!」という気持ちはあるものの、人間関係が原因でクビになったり、針のむしろになったりと人付き合いに自信がなかったので心の痛みを避けた結果でした。けれど、当時は本当の気持ちが分からず、『仕事が出来ない、と言われ続けた自分は本当にそうなのか、力を試してみよう』と気軽に考えていました。

 

◆ コンプレックスが止まらない

前職での経験を買われ、新しい職場も人事部でした。

ここで不思議なことが起こります。周囲の社員たちが皆にこやかに接してくれるのです。今思えば不思議でも何でもないんですが、当時の私は『何で放っておいてくれないの?』と鬱陶しく、不気味に思っていました。そりゃあ、ちゃんとしていそうな身なりの整った新人がいたら皆興味持つし、優しくしてくれるよね。虐げられるのが当たり前だった私の世界は一変し、適応出来ずに非常に混乱しました。その戸惑いは言動に表れ、次第に軽んじられるようになり、笑顔を向けられなくなってから初めて元の世界に戻ってこられたと安堵しました。その代わり、彼らから無言でじろじろ見られるようになります。違和感のあるものって目で追ってしまいますからね。日の当たる道を歩いてきた彼らにとって、私のようなおどおどした謎生物に会うのは初めてのことだったかもしれません。

この職場で悩まされたのは、大卒で新卒入社した人たちへのコンプレックスでした。毎年新卒採用を行っているその会社には、私と同い年の男女がゴロゴロいました。彼らはたいてい主任以上の役職につき、裁量のある仕事に見合った高い給料とボーナスをもらって、長期休暇のたびに国内外へ旅行に行き、流行の服を身に付けて自信に満ち溢れていました。一方、私は大学を中退しフリーターとなり、社交能力もなく仕事も出来ず職を転々とし、同年代と比べるとスキルがありません。しかし、同棲のおかげで家賃や水道光熱費を払わずに済んだのでお金が浮き、それなりのものを身に付けているため外見だけは彼らと同じように見えます。彼らに「年が近いから仲良くしましょう」と近づいてこられても、劣等感から顔は強張り、足は一歩後ろに下がります。こういった否定的な態度を取られればたいていの人はムッとします。彼らとあっという間に疎遠になり心の底から安堵しました。

落ち着いた頃、その年に入社した新入社員が研修を経て人事部に配属されました。彼女と一番歳が近いのは私でした。なお、人に聞くか、組織図でも見ない限りは私が派遣社員であることは分かりません。早速『頼りになりそうな先輩』と彼女に認識されて懐かれた私はどう接したらいいか分からず、とても困惑しました。

なぜならば、前職で新卒採用のアシスタントをしていた頃、最終面接に挑む学生たちの聡明さに内心で舌を巻いていたからです。どうして、面接官である役員相手に物怖じせず自分の意見を論理的に伝えることが出来て、それが受け入れられて内定をもらえるんだろう。自分にそれが出来るか、と問われたら絶対に出来ない、と敗北を認めていたからです。

例外でなく彼女も聡明で、人当たりが良かった。真面目で丁寧な仕事ぶりと真摯な受け答えから先輩たちに可愛がられていました。何よりも周囲の人たちは自分に優しくしてくれると信じているところが眩しくて直視できなかった。彼女はとてもいい子だったから嫌いではなかったし、僻んで意地悪をするほど私も幼くありません。でもコンプレックスが彼女を見る目に出ていたんでしょうね、目ざとい人たちに『あの子がいじめられちゃう!』と決めつけられて敵視されました。

また、当たり前のことですが彼女と自分に対する会社の期待度の違いにも劣等感を感じていました。配属当初、彼女は私が教えた仕事をしていました。数ヶ月も経たないうちに新しい仕事をどんどん任されるようになり、教えた仕事は手元に戻ってきました。私はずっと同じ仕事をしています。社員は会社の財産です。色々な仕事を経験して会社に貢献してもらいたい、と考えるのは当然のことで、派遣には社員の手間を省くためのルーティンをして欲しいと考えるのも当然のことです。『私もあちら側(社員)に行きたい』と思いながらも、人付き合いに自信がなくて二の足を踏んでいました。社員たちは私の目から見て、違う生き物のように映っていたからです。ずっと同じ組織の中で良好な人間関係を維持できることが不思議で仕方ありませんでした。具体的な例を挙げれば、どこの会社も社内結婚は結構あって、挙式に社長や上司、同僚後輩、取引先を呼ぶのは珍しくありません。参加者の顔ぶれや余興など、自分たちの社内での評価が式にモロに反映されるわけで、私には絶対に出来ないと恐れおののいていました。

 

愛着障害という概念との出会い

そんなわけで、『私は皆と何かが絶対に違う。でも何が違うんだろう』と悩み出した頃、人事部内で回覧される、障害者雇用に対する啓発活動の一環として発行された機関誌のある特集に目が止まります。

それは発達障害を持った人たちを支援するため奮闘する人々の記事で、気になる文章がたくさん載っていました。

うろ覚えですが抜粋します。

彼らはあっさり仕事を辞めてしまうことが多いので、びっくりする

社会に適応出来ず、引きこもりになる人は結構多い。そのあいだ、動画サイトや掲示板を見て過ごす人がほとんど

えっ、それ私のことじゃん。心血注いでいるように見えた仕事もあっさり辞めるし、再就職に自信がなくて引きこもっていた時、一日中ニコニコ動画ピクシブを見ていたよ。でも、数年前の検査で発達障害ではないと診断されているんだけどなー

 

発達障害愛着障害はよく似ており、専門家でも当事者の話を良く聞かないと判断がつかないことが多い』

 

愛着障害

初めて聞く言葉ながらも、妙に気になる言葉です。

家に帰ってから早速ネットで検索しました。

自分の窮状を説明するのにこれほどぴったり沿う概念はないと感じました。

 

愛着障害とは、

かいつまんで説明をすると、

子どもは養育者と親密な関係を維持しなければならず、それが出来なかった場合はその後の対人関係に応用される

という状態を指します。

詳しい理論は、下記をご参照ください。

愛着理論 - Wikipedia

 

早速アマゾンで関連図書をいくつか取り寄せました。

その中で、ためになった本を二冊紹介します。

 

愛着障害 子ども時代を引きずる人々 (光文社新書)

愛着障害 子ども時代を引きずる人々 (光文社新書)

 

(この本の特徴は、愛着障害の仕組みを分かりやすく解説してくれることと、愛着障害に苦しんだ著名人のエピソードがたくさん載っていることです。夏目漱石太宰治など文豪のほとんどは愛着障害を持ち、その苦しみが創作の源泉だった、と知って悲しくなりました。また、世界をひとつ上のステージに導く人は、安全基地を持たず、既成の概念に囚われない愛着障害を持った人に多いそうです。発達障害と言われることの多いジョブスは、この本では愛着障害だと言われています。

なお、愛着障害には四つのタイプがあり(安心、不安-両面感情、不安-回避、混乱)、チェックシートで自分の傾向を知ることが出来ます。ちなみに私は混乱型でした。一番治療が難しいそうです。がっくり)

 

子どもを生きればおとなになれる―「インナーアダルト」の育て方

子どもを生きればおとなになれる―「インナーアダルト」の育て方

  • 作者: クラウディアブラック,水澤都加佐,武田裕子
  • 出版社/メーカー: アスク・ヒューマン・ケア
  • 発売日: 2003/07/30
  • メディア: 単行本
  • 購入: 11人 クリック: 50回
  • この商品を含むブログ (20件) を見る
 

(この本は自力で愛着障害を治療するワークブック、という特徴を持っています。自分の傾向が分かったら治療の足掛かりとして本書をオススメします。しかし載っている内容をひとりでするのはかなり難しく感じた(思い込みを思い込みだ、と気付くことが治療の本質のため)ので、プロの手を借りる前に自分の内面を整理したり、ある程度トンネルの出口が見えてからの総仕上げに使ったりなど、補助的な使い方が向いているかもしれません)

 

 

早速関連書籍を取り寄せたのはいいけど、これらと向き合うには時間と気力が必要だと思いました。

また、正社員として就職できる年齢のタイムリミットが近づいています。『私もそっち側(社員)に行きたい』という自分の望みを叶えるため、派遣の契約を更新せず、有給を全部消化して愛着障害の治療と就職活動に費やすことにしました。

意外なことに派遣先からは直接雇用の話を頂きました。

しかし、私は断りました。『この会社が提供するサービスを私は欲していない』『全国転勤するのは嫌だ』というもっともな理由を自分に言い聞かせましたが、本当のところは『良好な人間関係を継続する自信がない』というのが本心でした。

 

たった二週間ほどで長年の愛着障害が根治することは当然なく、現在も続く長いトンネルに入ります。